Bag

兵庫県豊岡市とかばん

兵庫県の日本海側に位置する豊岡市は、かばんの生産量が日本一であることで知られています。豊岡市とかばんの関係は古く、「古事記」の中に、豊岡市のある但馬地方を拓いた天日槍命が、柳編みの技術を伝えたとされています。豊岡市とかばんの関係のルーツは、この柳を使って作られたカゴだと言われています。このカゴを作る技術がやがて、柳を使ったかばん「柳こおり」の生産へつながり、この柳こおりは豊岡から全国へ出荷され、全国的に名声を築いて行きます。
その後、明治時代にはパリ万国博覧会において豊岡産の柳製品が銀賞を受賞、1936年に開催されたベルリンオリンピックで選手団の使用するかばんに豊岡のファイバーかばんが採用されるなど、豊岡産のかばんは全国的に知名度が高まっていきました。1953年には、従来のスーツケースを改良し、形崩れを防止しながらも軽いかばんが誕生、他商品を圧倒するヒットとなり、かばん産業が豊岡市の地場産業として確立されました。

バッグへのこだわり

株式会社ウノフクは日本有数のかばん産地、豊岡で1921年(大正10年)に創業、東京で当時定番化していた縫製方法をアレンジし、独自のデザインを加え、その評判はまたたく間に全国へと広まることとなりました。第二次世界大戦を経て、戦後復興の中、豊岡で作られたかばん・袋物・柳籠などをドイツ老舗百貨店「カウフホフ」、フランス老舗百貨店「ラファイエット」をはじめ、世界の先進国への輸出を始めました。
近年では2012年にはバッグ業界最高峰の「MIPEL」(イタリア ミラノ)での入賞など、常に時代の先端を目指し走り続けています。
Interview
かばん職⼈インタビュー
横川 繁之

Q:簡単なプロフィール紹介をお願い致します。

A:約43年から45年ぐらい、この世界におりまして、先代から教わりつつ、色々なバッグの製造の方を手掛けてまいりました。で、この15年くらいは、規模を少し大きくしながら、新しい、次世代の職人さんを育成するということも念頭におきながらやってまいりました。実際、始めた頃には当時、50代、60代、70代の職人さんを使ってやっていたんですけども、どうしても世代交代が必要であったり、御子息やご令嬢が継いでくれればいいんですけども、なかなかそうはいかない社会でしたんで、でしたら自分のところで養成、育成をして伝統の技術をね、できるだけ多くの人たちに伝えて、絶えないようにしていきたいなという風な思いで、工房的な形、要するに工場ですね、大きめなアトリエとして、現状では今、8名の職人が作業して、バッグを作っておりますので、そういう形で今後、20年30年先も、同じような技術が継承できるようにやっていこうと考えて、やっております。

Q:普段どういった内容のお仕事をされていますか?

A:通常は、この銀座の近くにもいっぱいあるようなお店及び百貨店の売り場で販売するようなハンドバッグ、女性ものから男性ものまで作ってまいりましたけども、今回のこのウノフク様のこの店舗のように、価値のあるものをできるだけ作っていきたいっていうふうに考えて、やっております。なかなか、まあ今はコロナ禍ということもありますけども、やっぱりどうしても感性がちょっと薄れているような、どちらかというと使いやすいことが優先であったりする部分が強くなったこの5、6年だったと思うんですけども、やはり、正直言うと僕なんかが思っているのは、やっぱりファッションというのは多少苦労が必要な部分と、辛い部分も多少あるんだと思うんですね。まあ、TPOと言われますけども、要するに時間帯や場所、occasionにおいてファッションを変えるなんてことをしないような時代になってますけども、やはり気分転換とか自分の生活の中で、ここはちょっときらびやかに見せたいなとか、かっこよく見せたいなと思うような、そういう商品をね、目標としてやってくるようにしてましたんで、これからもそれを是非とも継承していきたいなと思っております。

Q:今回かばんを制作していく上でこだわったポイントはどこでしょうか?

A:こだわりという部分で言いますと、どうしてもデザイナーの気持ちっていうんですか、それが一番大事にしようとは思ってはいるんですけども、やっぱり残念ながら紙に書いてるデザインがその通り立体系のバッグになるかっていうと、非常にこれやっぱり難しいんですね。デザイン、素材という問題もあって、そのへんが素材とデザインがマッチングしてないと、実際に形状にはやっぱりならない部分もあるんで、今回ウノフク様の方から依頼していただいたものは、二転三転というわけではないですけども、やはりこの状況じゃないと、こういう作り方じゃないとできませんよっていう部分が、最終的な形になってますんで、そういう意味ではウノフク様のデザイナー及びウノフク様の会社の方針等々含めて、こちらのクオリティと我々の技術のうまいマッチング、ミキシングをすることで何とかその安定的な状況のものが提供できるように、一本だけデザインで芸術品を作ることができるんですけども、一本作るためにやっている商売ではございませんので、やはり20本30本、先行きにはそれが何百本になっても同じクオリティと同じ感性のものができるっていうことを頭の中に置いて製作はしております。

Q:実際のものとあわせてこだわりポイントや機能のご紹介をいただけますでしょうか?

A:このバッグはブリーフ、書類ケースになっておりますけども、革自体がちょっとガラスっぽい、表面が非常に綺麗なスムースな革で作っております。そのスムースの、綺麗な革の肌をどうしても表現したいために、いろんな部分で切り替えを作って、濃淡を出したり、そういうデザインがあったんだと思うんですけども、やはりどうしても、ブリーフっていうことは中にある程度書類を入れて、荷物が入るってことですから荷重がどうしてもかかる。やっぱりそういった意味では持ち手のところの強度とか、まあシルエットを崩さないようにしながら強度を上げること。まあそれと後ろを見ていただくとわかるんですけども、どうしても台の上やデスクの上に置く場合に、直接革がテーブルとかそういうのに触れますと、傷がついたり汚れたりしますんで、通常は4つ付けるものを中央部にも付け、全体的に革の表面が置くテーブルその他の上に直接つかない様な形、傷がつかない様なことを考えまして、そういう形でやっております。大きさの割には非常に軽いです。革の特性もありまして、あまり厚手の革を使いますと重たくなってしまいますので、実際にはちょっと表面と裏の革をすって薄くした革なんですけども、強度を上げるために別の芯材を貼って、こういう形状にしております。まあ、背中側にもこうポケットがついてますけども、マグネットが非常に邪魔にならない様な形のマグネットを使ってますから使いやすい部分もあるし、ショルダーベルトもついてますので、今の形のビジネススタイルには非常にあっているんじゃないかなとは思います。まあそれと、今回作りとして正面から見た長方形の形が崩れない様にした方がいいんだろうなってことで、作り方としては周りに全体的に、こちらサイドを硬くするんじゃなくて、こちらはソフトな感覚があるんですけども、側面とか底辺とか上面の方を強度を立てて、それによってこのバッグの形状を保つという形に仕上げましたんで、安心して使えるものかと思っております。

Q:今回作っていただいたかばんと他との違いというのはありますか?

A:いろんな、この40年間ブランドのバッグを作ってきましたけども、創成期の頃はやはり世界的にライセンスの波がありましたので、海外のブランド、海外のデザイナーを、向こうでデザインしたものを日本風にアレンジしてこちらで作るとか、そういうことはありましたけどね。やはりテイストっていうのがね、イタリアだったりフランスだったりっていうのが入ってきたりしてますけども、今回やっぱり純粋な日本の国内の中で、国内の材料を使って、また国内のデザイナーがね、日本人のデザイナーが書いたもの、まあ豊岡をはじめとして買われる方、お客さんの方々の感性もよくわかっているウノフクさんですから、特に長年ウノフクさんの方のバッグも手掛けさせていただきましたけども、やはりデザイナーとマッチングが非常にこの長年あってきたのかなと思っております。特にこの数年ね、デザイナーもまた新しく入られて、非常にやりやすくなったという部分と厳しい部分、両立してきています。実際にあまりゆるやかすぎてもね、お客さん目線がちょっと減っちゃったりするもんですから、やっぱりお客さん目線の中を重視するデザイナーの意見をできる限りインプットしながら、何とか形にするということが最大の目標でありますし、かと言って100%それを応えてあげたい部分はあるんですけども、どうしてもその製作上の部分とか強度的な部分でどうしても無理な部分は打ち合わせさせていただいて許可をいただいて、そのために今回のこのバッグの方も3回サンプルを、実際4回作り直しているんですけども、そのくらいやっぱり入れ込むというか、時間と暇とお金もかけてやってみないと、想像だけとか紙の上のだけの問題だけじゃ、どうしてもわからない部分が、我々制作の職人たちもですね、特に一本目のサンプルを作る人間が3人いて、3人が3人いろいろ考えながらやりつつ、途中で変更したり、いろんなアイデアを盛り込んでね、こうすればもうちょっとシルエットが綺麗になるとか、このへんがちょっとやっぱりシルエットが良くないところはこうした方がいいかなっていうのは考えながらやってますんで、90%くらい意向に沿ったものが出来上がる様になりましたし、やはりウノフクさんのこれからのね、方針に合わせて価値観のあるものをそれなりに、やはり材料が高いもの使ってものが高いのに、綺麗なものが上がらなかったら何の意味もありませんので、やっぱりそれに対応できるだけのね、技術の中で何とかやっていきたいなと思ってますし、我々も厳しいものを与えられればそれだけ技術もアップしていきますので、うちの職人たちは実際に40代、50代、この世界にしたら若い人間たちがやってますから、そういった意味では伸び代もまだまだありますし、逆にいうと知らない部分があったりするんで、かえって答えが、今までの人間が作った答えではなくて新しい世代の職人が出した答えで出来上がったバッグになっていると思いますんで、そういった意味では新しい世代の完成品と思って提供させていただいてます。

Q:今回の製品を通して、消費者の皆様へお伝えしたいことは?

A:今の消費者の方々っていうのは、はっきり言いますと僕らの年代とは全然違うと思いますんで、正直バブルを経験しているかしてないかっていう世代の差っていうのは大きく出てると思うんですね。我々がやはり若い頃にファッション業界の中でこうやって生きてきた時には、やはり、かっこいい、これ欲しい、次あれ買いたいな、あれを持つためにはもうちょっと頑張って仕事すればあれが手に届くよねみたいな、そういう向上心とか、悪く言えば欲望みたいなのってあったと思うんですよね。最近その気持ち、そういうのが薄れてる世代が多いのかなっていう気はします。先ほどもちょっとお話ししましたけど、使いやすさとか軽さが優先されてて、簡単にいうとルイヴィトンのバッグだったらどんな格好でも持っていいやみたいな形になっちゃったり、一つのバッグがあれば全てそれで賄っちゃうみたいな部分があったと思うんですけど、やっぱり仕事に行く時、遊びに行く時、パーティーに行く時、ピクニックに行く時、郊外に行く時、車で出かける時、それぞれファッションも違うし感性も違うと思うんですよね。そのぐらいハンドバッグや何かにもね、違いがあっていいものかなっていう風には考えています。そんなにファッションかっこよく決めるのは楽なことじゃないんで、お金もかかるし。でもやっぱり、いいものを持った時とかいいものを着た時、その時の気持ちの高揚感っていうのをもうちょっと持ってもらいたい様な気もするし、持った時の感動っていうのを出来れば味わわせてあげたいなっていう部分もこちらもあるんで、今回ウノフクさんの方からの提案で、価値のあるもの、この一個はこういう時に持つものだけどそれの時に、やっぱり自分の背筋がピッと伸びる様な部分もね、感じてもらいたいなっていう感じがします。自分でも日頃、年齢も上がってくると楽な方楽な方行きがちなんですけども、さあじゃあ、たまにはね、いい格好して銀座でも行こうよって言われたら、じゃあその時に着ていくスーツがない、持つバッグがないっていうのは、やっぱりちょっとつまらないかなっていう部分はあるんで、もうちょっとそのタイミングタイミングって言うか、そういった部分でもうちょっと人生のね、楽しみ方も模索しながら経験してもらいたいなという風に思ってますんで、店頭でパッと見た時に、これは輝いてるなと思うものは、やっぱりそれなりなものであって、これでいいやっていうものではない部分、やはりそのくらいのね、価値観の違いをよく分かってもらった方が、今後のためかなとも思うんですし、先行きそういう世代がもっともっと輝かしいものを作っていかなければなりませんので、ファッションの世界からそういうことを提案できればという風に考えてやっています。

シンプルでスリムなフォルムがスタイリングに溶け込み、ビジネスシーンでも活躍する使い勝手の良いデザインです。国産の本牛革「ワクシングレザー」を贅沢に全面に使用しております。こちらの革は、鞣す際に皮が本来持っている余分な油等を全て取り除く為に、脱クロム処理工程をあえて行っています。その工程を加えることで、革の表面の銀がしっかり定着します。そして再度リクロム処理を施し、更に大量のタンニンを投入する事により、クロム革特有のしなやかさ、タンニン革特有のハリ感を最大限に引き出し、仕上げには表面にオイルをのせることで滑らかさを引き立たせています。手間と時間を掛けて完成された最高のコンビなめし革です。